屋根の形状にはいくつかの基本形があります。
入母屋屋根は、そのうちのひとつで、比較的複雑な屋根形状です。
基本的な屋根形状
基本的な屋根形状の3タイプについて、屋根伏せ図に基づいて解説します。
・切妻屋根
主棟のみで屋根面が分かれます。原則2面の屋根になります。
・寄棟屋根
主棟と隅棟で分かれます。屋根は原則として4面になります。
・入母屋屋根
主棟と隅棟と妻壁で分かれます。変形の4面になります。
※その他、片流れや方形(ほうぎょう)というタイプがあります。
入母屋屋根の特徴
入母屋屋根は、切妻屋根と寄棟屋根とを合体させた形で、側面に三角形の壁ができます。
屋根伏せ図のように上から見たり正面からだとと見えない壁ですが、側面か少し角度をつけると見えます。
主棟の端部を頂点にして、隅棟の上部を結ぶラインが底辺になります。妻壁のラインは建物の桁位置かやや内側に入ります。
両側の流れに破風板を使うことから、単に破風とも呼ばれます。
切妻屋根や寄棟屋根と比べて屋根が立体的に見えるため、見栄えが良くなるのが特徴です。また、軒が深くなるため、外壁に当たる雨の量が少なくなり、壁の防水力は向上します。
さらに、切妻屋根と同じで両側に壁があるため小屋裏の換気が取りやすくなります。
ただし、三角形の壁には雨が当たることもあり、屋根の防水面ではやや弱いと言えます。特に底辺近くでは小屋裏への雨水の浸入がみられます。
また、軒の出と妻壁がやや内側に入る分、切妻や寄棟などの屋根と比べて面積が広くなり、重量も重くなります。軒の出を支えるための垂木や桔木(はねぎ)も必要になります。
切妻や寄棟と比べて、同じ大きさの屋根でも手間がかかるため現在の一般住宅では少なくなっています。伝統的な在来木造住宅か社寺・城郭の建築では採用されることが多く、壁部分の仕上げは板張りや格子組み、左官などで仕上げます。
入母屋屋根の場合は、瓦屋根が多いですが、それは社寺建築で箕甲部分を納めるためでした。箕甲とは「みのこう」と呼ぶ、妻壁の切妻状のケラバ部分に当たる箇所です。
この部分は一段ないし二段下げて、且つ瓦の向きを変えて見栄えを良く仕上げています。
板金屋根では納めにくい箇所となり、柔軟性のある銅板でこの部分を巻き上げる形で納めたのが神社の社殿です。その後お寺にも取り入れられるようになり、軒先に厚みを持たせた見付部分を作ることでバランスよく屋根のラインが表現できるようになりました。
コメント